だから、あの日、あの墓所で、霧子の泣いてる姿に出会った時。 その唇の赤さから、俺には、霧子の動揺が半端なものじゃないことが察せられたんだ。 「もしかして……親死んだとか?」 「婆ちゃんだよ」 「いまどき、婆ちゃんが死んで泣く奴いるんだ」 「っさい! 余計なお世話だよ!」 そう叫んで憤る霧子の泣き顔を見て、その素直さにほっとした。 あいつがどんだけ婆ちゃんを大切に思っていたのか、俺は知っていたから。