わたしの祖母、山野トメは、昨日八十九歳で神に召された。




長年患った狭心症が、彼女の心の臓の息の根を止めたのだ。

若い頃の肉体労働が、その心根を鍛えはしたが、心の臓に与えた負担は後年になって表れた。

最初の発作が起きたのは、齢七十の時と聞いている。

わたしが生まれる少し前。

死を覚悟した祖母は、誰よりわたしの誕生を喜んだと聞く。


人は天寿を全うしたと言うけれど、そんなの何の慰めにもならなかった。


わたしは大好きな祖母を失って悲しみに沈んでいた。