その時柳は言いようのない不快感に襲われる。

「どうしたの?」

それに気づいた佳伊が聞く。

「いや、何か……嫌な感じなんです。ゾクゾクというか……気持ち悪い感じです」

どんどん柳の息遣いが荒くなっていく。慌てて佳伊が車を路肩に止める。

「すいません、何か…」
「無理に喋らなくていいから。深呼吸して」
佳伊の言葉に大きく深呼吸する。しかし荒い息遣いが治らない。

その時柳の脳裏に男が出てくる。

母たちを殺したあの天使の顔だ。でも何で今……

そして柳は気づく。
同じ気配なんだ。今感じてるこの感じ。

「柳?」

その言葉に大きく深呼吸してやっと言葉にする。

「天使がいる…この感じ…母さんを殺したのと同じどろどろとした気配がします」

それを聞いて佳伊は神経を集中させる。しかし佳伊にはその気配が追えない。

「方向わかる?」
「2時方向です」
佳伊は車を発進させた。

気配が近づいている。柳はどうして自分がこんなことできるのかわからなかった。でも確実に天使の気配だ。
不快で許せない。殺意が膨らんでいく。

「ここです!」

佳伊が車を止める。そこは使われてなさそうな倉庫だった。