確かに聞こえた声。 聞こえた足音。 革靴が地面につくときに聞こえる、コツ…コツッ…っていう響きのいい音。 嗅ぎ慣れた、いい香り。 確か…結構高い値段の香水だ。 そんなキツくもない、いい香りを漂わせ、あたしの頭の上からこれでもかって程暴言を叩くこの人は… 「まじでアホだろお前──」 『蓮斗…っ、どうしてっ』 蓮斗──しかいない。