「雷樹、あとは頼んだからな?」みんなの声を雷樹は、はいはい、と適当に流す。

「わぁーってるっつの♪ほい、早くでてく」
そしてみんなの背中を押した。
「…あ。俺、忘れ物した」
直後、蓮斗が一回戻ってきた。
「何を………」
麗央がちょっと不機嫌そうに振り向く。
「唯」
だんだん綺麗な顔があたしに近づいてきて……。
『へ…?』
チュッ…。
ほんの一瞬。
蓮斗にキスされたんだ。軽く。
「おまっ………はぁー……」
麗央がため息をついた。
「ごちそーさま♪じゃーね♪」
蓮斗は意地悪く口角を上げて、あたしを見下ろす。
ドキッ…
ってそういうんじゃなくて…。
「…お前らおいてくから」
普通に蓮斗は保健室を出ていく。結城と麗央は、追い掛けるように消えていった。
あたしは、固まったまま動けなくなった。
「唯ーっ!唯ってばぁ」
ただただ、雷樹の声があたしの頭を回ってた。