ドアを開けて、数秒もしない内だったと思う。
誰かが何か言う前に、俺は恋に落ちたらしかった。
らしかった、というのは、そのときはまだ、自分の気持ちに気付いていなかった、から。
「お帰り、凪」
夕が言った一言に、慌ててただいま、と返す。
「……誰?」
「ああ、ごめん。彼女は……」
夕が言おうとする前に、俺の勉強机の椅子に座っていた彼女が、立ち上がって笑顔を向けながら言った。
「初めまして。私は、夕と同じクラスの平坂 稜です。確か、隣のクラスの…双子の弟の凪くんだったよね?同い年だから、タメ口でよろしくねッ!」

