君が笑ってくれるなら

「……凪なら……昨日電話が来たよ。見舞いに行けなくてごめんって稜に伝えてくれって言ってた」
 
遠くを見つめていた彼女が、振り返る。
 
「ホント?凪が?」
 
俺は頷いた。
苦し紛れの嘘だった。
それでも彼女は、そんな嘘をすんなりと信じた。
 
「そっかぁ」
 
そう言って微笑む彼女を見て、彼女がなぜ凪を求めたのか、疑問が生じたが、きっと弟だからだろうと安易な考えで、片付けた。
 
その言葉に、どんな重要なことが潜んでいるとも知らずに。
 
「じゃ、面会時間終わるから。また明日」
「うん。また明日!」
 
彼女を残して、俺は病室を後にした。