「……夕?」 戸惑ったように兄の名前を呼ぶ声に、はっと我に返り、彼女から離れた。 そうだった。 彼女が求めているのは、俺じゃない。 忘れてしまうところだった。 彼女があくまで求めているのは、夕なのだ。 俺は、死んでしまった夕の代わりであるだけ……。 「夕?どうかしたの?」 再度名前を呼ぶ彼女に、俺は笑って、応えた。