君が笑ってくれるなら

話し合いの帰り道、途中で購入した缶ジュースの二本の内、紅茶飲料の方を手渡す。
ありがとう、と笑顔で良いながら、彼女は嬉しそうに受け取った。
 
「……これは覚えててくれたの?」
「……何か、勘みたいな感じかな。手が勝手に動いた」
 
勘な筈がなかった。
何かとこれを飲んでいたから、余程好きなんだろうと、いつも遠くから見て思っていた。
 
「何か嬉しいな……。ねぇ……記憶は戻らないの?」
 
微笑んでいた彼女の顔が真顔になり、俺を見て問うた。
 
「戻る可能性は低いって……ごめん」