実は、「家にいてもやることがない」というのは、ただの取ってつけたような口実。
本当は家にいたくなかったからだ。
 
 
 
家には、「彼女」がいるから。
 
 
 
気温と比例して、体温も上がってゆく。
汗が皮膚から滲み出る。
 
口から、咥えていた棒が逃げた。
地面に降りたそいつを目では追いかけたが、手では追いかける気はなかったので、そのままにしておいた。
蟻が一匹、棒にちょっかいを出していた。
 
目線を地面から空へ移した。
といっても、俺の真上は木の葉に覆われて、空は隙間からしか見えないけれど。
 
腕を瞼の上に乗せると、視界は真っ暗になった。
当たり前のことだった。