「稜……」
先ほど目を覚ましたと聞いたのに、彼女は瞼を閉じていた。
本当に目を覚ましたのだろうかと疑うくらい、動かない彼女。
ぐるぐると包帯が巻かれた手ん握ろうとした時、彼女はゆっくりと目を開けた。
「稜……?」
唇からは、彼女の名前が自然と零れる。
彼女が目を覚ましてくれたことに対しての嬉しい気持ちと、夕が死んだことに対しての混乱した気持ちが入り交じり、何を言ったらいいのか分からない。
だが、その気持ちは、彼女が言ったたった一言によって、全て沈黙した。
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