雫からの手紙は、今日は来ていない様だ。

 インスタントラーメンのお湯を沸かし、冷蔵庫の中の飲み物を確認する。
 コーラやサイダー、殆どの飲み物がきれている。
 時計を見てみると、まだ七時前だ。
「買いに行くか」
 お湯を沸かしている火を切り、財布を片手に家を出た。
 
道の端に位置している街灯と、空に光る数個の星だけが、夜道を照らしていた。
そんな道を数分歩いた所に、スーパーマーケットがある。
近隣の住民は、大抵がここを利用している。
入り口に置いてある買い物かごを手に取り、まっすぐジュースの売り場へ向かった。
並んでいる炭酸飲料を数本ほど、かごに入れる。
これだけあれば、三週間は持つな。

 レジで会計を済ませ外へ出ると、意外な人物に出くわした。
 片手に重そうな買い物袋を抱えた宮久保だ。
「宮久保」
「え? 烏丸君」

 星と街灯だけが照らす夜道を、二人だけで歩く。
「こんな時間に買い物か?」
「うん。仕事から母さんが帰って来る前に、夕飯の買い物をしておこうかと思って。烏丸君は?」
「冷蔵庫の中身がなかったからな」
 数本のペットボトルの入った、買い物袋を彼女に見せる。
「炭酸ばっかり……」
「ああ、好きだからな」
 彼女の顔が少しだけ引き攣る。
「もしかして冷蔵庫の中身って……炭酸のジュースしか入ってないの?」
「まあ、そうだな」
「食事は、どうしてるの?」
「インスタントラーメンで充分だろ」
「えっ!」
『信じられない!』とでも言いたげな顔をされた。
「体とか大丈夫?」
「今のところは。まあ、運動だけは欠かしてないから」
 宮久保は俯き、その場で歩を止めてしまう。
「どうした?」
「そんな生活してたら……そのうち死んじゃうよ……」