「梨華ちゃんが、海の子?」
「はい、多分」
麗奈さんが机に戻した、
開いた母子手帳の父親の欄には、
神田 海
としっかり書いてあった。
「嘘でしょ?こんな事ってあるの?
もしかして…お母さんの名前は?」
涙まで流す麗奈さんにあたしは、
「峰岸 楓(ミネギシ カエデ)です」
しっかりとした口調で、
何十年かぶりに悪魔の名前を言った。
「やっぱり、楓さんだ。てことは、
林組の時の楓さんは見てないけど、
変わっちゃったのね」
と寂しそうに涙をまた流した。
そんな麗奈さんにあたしは、
「お父さんと、お母さんの事詳しく
聞かせて貰っても良いですか?」
と質問した。
麗奈さんはもう一度写真を見ながら、
「いいわよ。あたし達が知り合ったのは、
高校生の時だったわ」
とゆっくり離してくれた。

