―――…
「失礼します…」
そこには、ドラマでお世話になったプロデューサーの若松さんが座っていた。
「久しぶりだね、花恋ちゃん」
「お久しぶりです」
お仕事が忙しいせいか、前より少し痩せていたような気がした。
「実は話したいことがあってね…社長さんにお願いしたんだ」
黒い鞄から、大きい封筒を取り出す。
「二階堂音楽大学…?」
二階堂音楽大学と言えば、数々のアーティストを輩出している大学。
「実は僕の妻が、この大学のピアノ科の教授をやっていてね…花恋ちゃんのことを話したんだ」
「私の…ことを…?」
「うん。そしたら、二階堂音楽大学に来ないかって…もう大学決まっていたら悪いんだけど、少し考えておいてくれるかな?」
私が…音楽の大学!?
「ゆっくり考えて答えが出たら、僕に電話くれるかな?」
そのまま出て行こうとする若松さんにお礼を…と思い、精一杯声をだした。
「あの…ありがとうございます!」
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