「私はさ、卒業すれば教師と生徒の関係じゃなくなるけど…」
私は考えていなかった。
「アイドルって、その世界を辞めない限り続くものでしょ?」
楓ちゃんは、私には持ってない観点を持っている。
だからこそ、聞きたいと思った。
「楓ちゃんはさ…アイドルはどうして恋愛しちゃいけないんだと思う?」
しばらく沈黙が続いた後、楓ちゃんは私の目をしっかりと見つめて言った。
「…幸せにしてあげられないから…大好きな相手を…」
分かるようで、分からない答えだった。
「先生だってそうだけど…付き合っていることがバレたら、先生も私も周囲からは偏見の眼差しで見られるし、批判されることは目に見えて分かってる」
きっと、楓ちゃん…先生に言われたんだ。
「優星がアイドルじゃなくて、普通に私と同じ高校生だったら、普通に会えてたのかな…?」
そんな私を見た楓ちゃんは、こう言った。
「出会ったこと、後悔してる?」
私には、その質問の答えを考える時間なんていらなかった。
「出会えてよかった」
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