社会科準備室に入ると、先生は座って小テストの採点をしていた。
入ってきた私に気が付いた先生は
「ここに座りなさい」
と言って、丸い椅子を指差す。
翔さんの過去を聞いた時のことを思い出す。
「また呼び出した理由が分かるか?」
また"優星と別れろ"という言葉を言われそうで、何も言えなかった。
「進路調査の紙…今日が提出期限だけど?」
あ…進路調査の紙ね…
私はすっかり忘れていた
それよりも、先生は私のことをどこまで知っているのだろうか。
「…先生?」
「なんだ?」
「先生は、大切な人とかいないんですか?」
咄嗟に出た質問と同時に、白紙の進路調査書を差し出す。
先生は1つ、深く大きな溜め息をついた。
「いるよ…言葉では言い表せないくらいに大切な人」
ならば先生だって、私が優星を想う気持ち分かってくれるでしょ?
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