「もちろん、恋愛なんか絶対禁止だった」
母は何か覚悟を決めたかのように、私の目をしっかりと見た。
「でもね…当時、大好きな人がいたの」
母の大好きな人とは、私の父のこと。
母が口に出さなくたって、見ていれば分かる。
「花恋に優星くん…分かるわよね?
恋愛をしたら、アイドルは続けることはできないの」
世間は何故、アイドルは恋愛をしてはいけないと決めつけるのだろうか?
「どうしても、この"好き"って気持ちを諦められられなかった…」
恋愛を選ぶか、仕事を選ぶか…?
それは、何年何十年…いや永遠に答えなんか見つからない。
でも、母は…
「結局、私は…恋愛を取ったの」
後悔なんかしていない
「でもね、後悔はしてないわ」
そう決断した母は、私たち2人に微笑んだ。
「だって、こうして花恋も…元気に生まれてきてくれて」
「どんなときも、どんなことがあっても、変わらない2人でいなさい…ずっと…」
どこにでもありふれているような言葉なのに、すごく心に響いた。
.