帰りに、このテレビ局内で迷子になる自信ある…
あまりにも広すぎて。

はぁ…

1つ溜め息をついた。

「あのさ…」

え?
彼から話しかけられたことに驚いてしまった。

「俺、下まで一緒に行くよ」

まだ、撮影残っているのに…

「いえ、大丈夫ですよ。ありがとうございます」

「そうか。迷子になりたいんだ」

迷子になりたい!?
何言ってんの?この人…
本当に性格悪い。

「ちゃんと帰れますから…」

「いや、大丈夫。今日は撮影終わりだから」

「じゃあ…お願いします」

なんか、自分の心を読まれているような気がして、負けたように思えた。

「敬語。」

「敬語!?」

使い方間違えたかな?
いや、ついに怒りがタメ口となったか?

「やめてよ?年だって、1つ違い…。
さっき、若松さんから聞いた。
それと、優星って名前で呼んでくれて構わないから」

そんなこと、出来るわけないよ…

「はい」

一瞬、優星くんの目つきが怖くなったような気がして…

「はい…じゃなくて、うん…だよね?」



.