撮影は始まった。
「ラストシーンです」
「よーい」
合図と共に、優星の演技が始まる。
「スタート!」
私は優星に申し訳ない気持ちでいっぱいなの。
「俺、明日からヨーロッパに行くことになったんだ」
「え?明日!?」
相手役の子は、橘友香(タチバナトモカ)
「多分、2年間は帰ってこないから」
「…それだけ!?」
「他に何が?」
「もう、いいよ」
優星は相手の腕を掴んで
「美夏、好きだよ。愛してる」
優星はキスをした。
さっき、私がされたキスとは正反対。
「わたしも好き」
一方的じゃなくて、お互い想い合ってるキス。
監督さんのカットがかかるまで、すごく長く感じた。
出来れば、優星を独り占めしたい。
自分だけの優星でいてほしい。
さっき、私に掛けた言葉はセリフだったの?
それとも練習だったの?
.
