「唯ーっ!」


名前を呼ばれて振り返る。
呼んだのは宏樹だった。


「なにー?」

「もう帰る?」

「帰るよー」

「じゃ一緒に帰ろっ」

「そういえば宏樹も一人暮らし?」

「そうだよっ」


「唯ーっ!」


また誰かに名前を呼ばれ
宏樹との会話を中断した。

呼んだのは莉奈。


「なーにー」

「明日図書館で待ち合わせね」

「りょうかい☆」

「‥この方は‥?」


莉奈は宏樹を指差す。


「まさか、彼氏‥?!」

「違うよー昔からの友達」

「そうなんだっ」

「はじめましてー」

「あ、はじめましてー」


莉奈と宏樹は挨拶をした。


「じゃ、唯!明日ねー」

「うん、ばいばーい」

「ばいばーい!」


莉奈は走って行ってしまった。


「‥あの子友達?」

「うんっ莉奈って子だよ」

「可愛いじゃん」

「可愛いよー何宏樹、恋した?」

「え、可愛いと思っただけだよ」

「ほんとにぃ?(笑)」


宏樹は全然変わってなかった。
変わったのは見た目くらい。

昔は真面目な感じだったのに
随分チャラくなったもんだ。

帰り道。
久しぶりに再会した
宏樹との会話はつきなかった。


「そういえばさ唯彼氏いんの?」

「いなーい」

「好きな人は?」

「んーいなーい。宏樹は?」


こういう話は口が堅い。
私は話題を宏樹に変えた。


「好きな人ならいるかなー」

「莉奈?(笑)」

「違うって(笑)」

「えーまあ、応援するから」

「‥俺ここ曲がるから。
 じゃ、また明日な」


宏樹もこの話題から逃げた。


「ばいばーい」


また大きく手を振って
私はまた一人、アパートに帰った。