「わかる! 飲んだら味が全然違うのに。 でも誰もわかってくれへんし」 「そうやろ? なんでわからへんねやろな? こうもはっきりとちゃうのに」 「きっとみんな味オンチなんやわ」 「うん、 そうかもしれへん!」 そこまで必死になってふたりで会話したところで一瞬止まる。 そして顔を見合わせて笑う。 「あはは…。 そんなこだわりあるひとと初めて会うたわ」 「アタシも」 「あ、…俺、 法人金融企画グループの陶原ダイスケ」 首からかけているIDカードをアタシに見せながら彼は自己紹介をする。