紳士と淑女の推理紀行






後ろに、彼女がいるのは気づいていた。




堪えきれなかっただろう、少し荒い息づかいが耳に届いた。




「…どうして、教えてくれなかったのかな。君が犯人を捕まえてくれた事を。」




本当は、言うつもりで日本に来た。




全てを伝え、謝るはずで



「…自分は、逢坂夫妻を死なせてしまった。」




襖の向こうにいる、逢坂さんにも聞こえるように言った。




「君は犯人を捕まえてくれた人間であって、殺した犯人ではない。」



「死なせた原因だという意味です。」




そう、始まりは、自分が誘拐された事だった。




幼いあの頃




家の敷地から出て、一人で遊んでいた。




急に後ろから抱え上げられ、目隠しされ、車に乗せられた。




それが誘拐だと、理解する時間さえなく




助けてくれた人間は、父の知り合いであった探偵だった。




閉じ込められた部屋で、じっとしていたのは何日目かも解らなかった。




騒ぐ声と物音を聞いて、開いたドアから、自分を呼ぶ警察の人達




あぁ、やっと、助かった。