「お前…昔、男に何かされたのか?」
さっきまでの教授の表情はなくなっていて、
ふっと“大人”の表情になっている。
「え…」
冗談半分な瞳ではなく、こちらを真っ直ぐ見据えているような瞳にドキっとしてしまった。
「嫌なら、まぁ、答えなくてもいいけど。良かったらオジサンに話してごらん」
別にオジサンっていうほどの年でもないのに。
教授の年は聞いたこと無いけど、見た目は30歳前後に見える。
いつもはチャラチャラしている教授がこんな真剣な表情するなんて、ビックリした。
でも話せない。
男性恐怖症だなんて。
――“それ”の理由を聞かれちゃったら、とてもじゃないけど答えられないもの……。
「……フラれちゃったんです」
だから曖昧に答えると、教授は少し悲しそうな笑顔でポンポンと頭を撫でてくれた。
手から伝わる体温から優しさが流れてくるみたいで、嬉しかった。
「――お前はイイ女だよ。俺が保証する」
「なんですか、ソレ。褒めても、お世話役なんてしませんヨ」
本当は嬉しかったのに、プイっと顔を背け、口を膨らませた。
…素直じゃないなぁ、私。
でも教授はそんな私をクスクス笑いながら、見つめた。

