「なぁ、時東」
「なんですか?」
教授は、キーボードを叩いていた手を止め、私の方を向いた。
「さっきの話秘密にしといてくれよ」
「分かってます。じゃないと、教授の研究室が女の子で満杯になっちゃいますもんね」
「まぁ――それはそれで俺は嬉しいんだけど」
「…教授…」
もう。
教授の――なんかこう軟派な感じが苦手…。
でも専攻の研究内容がバッチリ私好みなんだよね。
だからこそ、麻生教授のゼミには絶対に入りたい。
それに講義は面白いし、先生としては大好き。
淹れてくれる紅茶も美味しいし。
「俺もさ、こういう仕事してるから暇じゃないんだよね」
「そりゃそうでしょう。研究やら、講義もしなきゃいけないですし」
「おっ。分かってくれる?次の学会の論文キツくてさぁ。俺もヘロヘロなわけよ」
「ふふ。お疲れ様です」
「でさ――お願いがあるんだけど」
「…はい?」
ニヤリと笑う教授。
嫌な予感に私の背中に冷や汗が伝ったのは言うまでもない。

