「下の名前は?」
間髪入れず彼は聞いてくる。
「え……ゆっ由芽ですけど……」
何でそんな必死なの、と言いたくなるぐらい彼は真剣な目をしていた。
この瞳どこかで………。
「――ああ、そっか。だから…なのね」
「…はい?」
彼は目の前で勝手に1人で頷き、納得している。
わけわからないんですけれど……。
「っていうか、貴方は!?名前」
私だけ聞いておいて、自分は答えないなんて失礼だよ!
「俺…?」
「そう、貴方」
「ふうん。やっぱり由芽も、俺のこと興味持つんだ」
彼は少し眉をひそめ、不機嫌な顔をし、被っている帽子をより深く被る。
そんな態度にカチンときた私は、
「…!?ちょ、勝手に名前呼び捨てにしないでっ。それに興味とかじゃなくって…」
と反論した。
人の名前を聞く前に自分から名乗るのって常識なのに、
なんでそこまで不機嫌にされなきゃならないの……。

