危ない家庭教師〜美男兄弟の誘惑〜

驚いて振り向くと、涼が立っていた。


「何で帰るの?」


「用事を思い出したから……」


「嘘つくなよ」


「え?」


「頭のいい綾子が、用事を忘れて俺んちに来るわけない」


ズバリと言われ、私は返す言葉がなかった。


「泣きそうな顔だったし」


「え、いつ?」


「俺に手を挙げた時」


「違うよ。私は笑ったよ、あの時」


「あれがか? 俺には泣きそうにしか見えなかったぞ」


ああ、涼だけは私の事分かってくれてるんだな……


そう思ったら急に涙が込み上げ、それを涼に見られたくなくて私は下を向いた。


すると、


「こっちに来て」


と言って涼は私の手を引いた。