危ない家庭教師〜美男兄弟の誘惑〜

「こんばんは」


と私がご挨拶をしたら、章さんは怪訝な顔で私を見上げた。


私の事は覚えてもらえてないのかな、と思っていたら、


「綾子ちゃん?」


漸く思い出してくれたみたいで、章さんは目を見開いてそう言った。


「あ、はい。そうですけど?」


「うわあ、ごめん。昨日と全然イメージが違うからさ、一瞬分からなかったよ」


そう言って章さんは私の全身に視線を走らせた。


「終わったの?」


「はい、今日のところは」


「ご苦労さま。やって行けそう?」


「何とか……」


「涼の奴が何か悪さしたら、すぐ僕に言ってね?」


「は、はい」


私は一瞬ドキッとしたけど、涼君にキスされた事を、章さんに話そうとは思わなかった。


「何か飲み物を持って来るね。あ、それとも食事して行く?」


「と、とんでもありません。私はこれで失礼します」


「そう? じゃあ今度ね?」


「はい。では、お邪魔しました」


私がペコンとお辞儀をすると、章さんはスクッと立ち上がった。