「いや、どこにもいなかった。まったく、何を考えているんだか……」


「おい、肝心の涼がいなくてどうするんだよ?」


部長さんが血相を変えてそう言うと、


「仕方ないでしょ? 私は涼に“今日は先生がいらっしゃるから出掛けないでね?”って言いましたから。それとも、紐で縛っておけば良かったのかしら?」


「いや、何もそこまでは……」


奥さんの剣幕に、部長さんはたじたじだ。


要するに、私が教える弟さんの名前は“涼君”で、親に刃向かってるって事ね。


ああ、先が思いやられるなあ。



という事で、当の涼君抜きで話は決められた。


私が来るのは月水金の週3日で、時間は2時間。

学科は英語と数学で各1時間。