危ない家庭教師〜美男兄弟の誘惑〜

身長はかなり高そう。たぶん180センチ以上あると思う。


「いらっしゃい。兄の章(しょう)です」


そう言って章さんは私に向かってうやうやしく頭を下げた。

そのはずみで額に掛かった染めていないサラサラの黒髪に私は目を奪われ、立ち上がるのに一呼吸、いや二呼吸遅れてしまった。


「あ、はじめまして。わ、私は稲垣綾子と言います。よ、よろしくお願いします」


ああ、もう噛み噛み。恥ずかしい……


私がペコンとお辞儀をすると、章さんはフッと微笑んだ。切れ長の涼しげな目元に真っ直ぐに筋の通った形の良い鼻。


そして薄い唇が笑った形からそのまま開き、


「綾子ちゃんだね? よろしくね?」


と言った。