再会の日から拓は黎子と頻繁に

連絡をとっていた


大学院生の黎子も時間の融通がきく


自分を慕ってくれる弟のような拓を

何とか元気づけてやりたいと思っていた


拓はある日黎子を映画に誘った


4年前拓の成績が上がってそのご褒美に

黎子が連れて行ってくれた映画


シリーズ化されたその映画の3作目が

この秋公開される




成長した主人公を見て

拓は時間が戻った気がした


黎子は4年の月日の長さを感じていた


二人の間にはやはり温度差があった



「拓ちゃんに映画誘ってもらうなんて

思ってもなかったわ~

お返しに食事奢らして!」


「そっちの方が高いのに悪いっすよ!」


「いいって~!こっちはバイトで

稼いでるんやで、任しといて!」


二人は映画館の近くパスタの店に入った


注文を済ませ料理が出てくるまで

さっきの映画の話で盛り上がった


本場のイタリア仕込の料理に堪能し

コーヒーを飲みながら一息つく



「そろそろ黎子さんの事聞かしてよ!」


拓は再会の日にはぐらかされた質問を

再度黎子にぶつけてみた


一瞬黎子の顔がこわばった

拓はその様子を見逃さなかった


しかし黎子はすぐ笑顔に戻り


「私は何にもないよ~彼氏もおらんし!」

そう言って横を向いた



(黎子さんがこの4年間何もない訳ない…

この俺には聞かすまでもないって事か!?)



拓はいつまでたっても手の届かない黎子を

もどかしい気持ちで見つめていた