あの日は雨で練習が早く終ったが

いつもはその日より1時間は遅い


夕貴は毎日待ったが

中々会う事はできなかった

そろそろ諦めようとしていた頃


今日の野球部の練習は

明日の練習試合に備え早く終った



出会いから約1週間たった頃

拓と夕貴は再会した…




拓の姿を見つけ夕貴が駆け寄る

「あの…これ!」


康平と恭二が気を利かして離れた


拓は一瞬何のことか解らなかった



夕貴が差し出した傘を見て

あの日のことを思いだした


「これ、有難うございました!」


「あ~もう返してくれんでも

よかったのに…

わざわざ待っててくれたん?」


夕貴を気遣う拓の優しさだった


「いえ…今日はたまたま返そうと思って」

ありえない嘘と誰でも解る


拓はそんな夕貴に好感を持った


拓の周りには女の子が溢れていたが

どの子も甲子園で活躍した球児という

肩書きで見ていたが

夕貴の場合はそうではなかった


「よかったらまた連絡していいですか?」


夕貴は自分でもこんなに積極的に

言えた事が不思議だった


拓はメモを出しサラサラと番号と

アドレスを書いて夕貴に渡した


お互い恋に破れ荒みかけていた心が

ほんのり暖かくなるのを

感じていた…