薫は集中治療室にいた


身体中をチューブだらけにされ

無菌室のシートで遮断されて

表情も解らない


面会謝絶状態でその姿も窓越しでしか

見ることができなかった


母親と響、叔母さんも来ていた

あと校長と担任の教諭と私がいた


規則的な計器の音だけの病室に

泣き叫ぶ声と嗚咽・・・

悲しみの坩堝のような光景だった


私は意味が解らなかった

何かの間違い・・・

これは薫ではない


信じたくないし信じられなかった


(バイクで事故なんてありえへん・・・

さっきまで私と一緒に居たやん


明日の約束をしてあんな笑顔で

帰って行ったやん・・・)


確かに家に着いたらすると言った

メールはなかった


(でも・・・これが現実なん?

お母さんも響さんも先生も

何で泣いてるの・・・?)


たった7時間しか経っていないのに・・・




でも現実には

自力では息もする事が出来ない薫が

そこにいた・・・