フツフツと訳の分からない感情が沸き起こる。
(離れてよ…)
それしか頭にない。
涙腺がじわりと潤いだしたのを感じた。
(何泣こうとしてんの?)
また意味がわからない状況で、あたしは必死にそれが零れないように我慢する。
でも、女の子は村野から離れようとはしない。
それどころか、舐めるように村野を下から上まで見つめて触って…。
確認し終えたようにまたギュッと抱き着く。
あたしはその場に無残な姿で座り込んだ。
「村野……」
あの子は村野を『諒太』って言っていた。
あたしの、知らない子。
諒太って呼ぶのは、あたしの本当の小学校にいた子たちだけのはずなのに。
脚の震えが止まらなかった。
プツリと切れたように、涙がぽとぽと落ちていき、スカートに染みを残す。
「………っ」
あの光景が、目に焼き付いて離れない。
早く抹消したいのに。
あたしはあれがあるから、たぶんこんな感じになっているんだろう。
村野に近づく他の女子には、こんなことあまり思わなかったのに…体中で危険信号が出される。
「いや……」
村野を触るあの子の手を思い出した。
(やめてよ……本当に)
頭にモヤがかかる。
ただただ、途切れなく出てくる言葉は…自分でも理解不能な欲望だった。
(お願いだから………やめて)
あんなふうに、村野を見つめないで…
村野に触れないで…
軽々しく抱き着かないで……
その左手を、―――握らないで………っ
あたしを温めて、安心させてくれるあの左手を…
あれは小さいときからあたしのものなの。
ずっとずっと大事にしてきたの。
誰にも譲れないと思ってた。
村野も少し覚えていたのかもしれない…
だから、他の女子には左手だけ触れさせなかったんでしょう?
それなのに、どうして許しちゃうのよ。
お願いだから、今すぐそんなの振りほどいてここに戻ってきてよ…っ
あたしのところに………
…戻ってきて………

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