止まっていた時が動きだす。
校庭にいる人はもちろん、窓から顔を覗かして見ていた人も拍手。
当の本人はそこまで気にしてない様子で加藤に声をかける。
友達はボールを片手に走り出す。
「おいどこ行く「大野先輩に謝って来る!」
(大野?)
友達を追いかけてその先輩の元に。
「すいませんでした」と深く頭を下げて謝る友達に先輩は親指で加藤を指した。
近くで見ると、もっと小さいことが分かる。
そして、スタイルがいいことにも…。
とにかく脚が長くて、全体的に細い。
印象に残っていた黒髪は艶があって背中まで伸びていた。
顔も可愛い…。
だけどどこか、男みたい。
喋り方とか、態度が。
笑った顔は、そこらの女子より可愛いのに。
「かっこ良かったな、あの先輩」
「大野先輩っていうんだ。サッカー部では有名だよ」
ボールを蹴った張本人、高崎が説明してくれた。
二年A組、大野真白先輩。
頭脳明晰、運動神経はこの学校の女子内で断トツの一位。
小さめの身長に顔も可愛く、最近は人気らしい。
三年の高杉先輩も溺愛なんだとか。
でも見た目と中身は大違い。
少し乱暴な言葉づかいに行動、サバサバしている頼れる性格。
男を感じさせる……いや、男をも超す男の中の男であったりする。
それを裏付けるのは女子。
ほぼ全員が、『そこらの男子よりもカッコイイ!』と証言しているらしい。
とにもかくにも、面白い先輩だってことが分かった。
普段女に興味のない俺が珍しく先輩を目で探す。

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