徒歩10分ほどたっただろうか
若菜とミランは洋館の前にいた
「はやくしなさいよ、若菜」
「だってぇ~いやだよぉ~」
若菜はすでに泣きべそをかいている
「召使なんていやだよ!!」
「仕方ないでしょ?私だっていやよ、こき使われるなんて!!」
「ミランもそう思うならなんで人魚姫の時みたいに友達設定にしてくれなかったのよ!!!」
「はああああああ。煩いわね。私たちがどの役回りになるかなんて、私たちが決められることじゃないの!!」
「え?」
これは若菜には少々意外だった
ミランかアルスランが決めていると思っていたのだから
「いーい?若菜、私たちは物語にとって異世界のものなの、言ってしまえば異物なの。邪魔な存在なのよ。それでも物語は私たちを迎え入れてくれる。なぜだかわかる?」
「分からない」
間発いれずに答えた
「もう、少しは考えてからへんじをしたらどうなのよ。物語はね、読者に対してはいつだって平等だからよ。そしていろんな人に、物語を、その中で生きた人物たちを深く知ってほしいって願っているからよ。だから物語はいつも歩み寄る読者にはどんなものにだって最高の席を与えてくれるのよ」
「まるで物語が自分の意思を持っているみたいね」
若菜はこの考え方にはなじみが薄かった
語り継がれるだけの物語が自らの意思をもって私たちを迎え入れる?
「当たり前でしょ。私とアルスラン“伝承者”は物語ありきだから、役割を決めるなんておこがましいわ。わかったら素直に従ってとっとと扉をたたく!!!!!!」
「わかったよぉ~」
コンコン
「はい」
3秒と経たないで出てきた
「全く、あなたたちね。さっきから人ん家の前で口論していたのは。あまりにうるさいから、これ以上いるようだったら守衛にでも引き渡そうかと思っていたわ!!」
「あの、私たち、今日から召使としてここに雇われているんですけど……」
「はぁ!?こんなのが召使??先行不安だわ~、役に立たなかったら即首だから!!」
そう言って少女は母親を呼びに屋敷の奥に消えた
「なにあいつ」
若菜はあまりの感じの悪さにすでに機嫌を悪くしている
「あの子はリリー。長女ね」
「ミランみたい」
「なんですって!!」
二人は幸先が非常に悪いことを感じながらも、屋敷の中へ足を踏み入れた


