パレット


「か、神林くんもうちょっとだけここにいてくれない? わたし飲み物ないから買ってくる」


「え? あぁ、俺買ってこようか?」

「え! いいよ、悪いよ」

「いーから、俺も欲しいし。ほら、何がいー?」


右手からぱっと小銭を取られる。

そんなんされたら買ってきてもらうしかないじゃん……。


「じゃあ……ウーロン茶」


さっと出ていく背中。

あ、汗のあとついてる……。


ああもう!

なんでそんなにカッコイイかな!?

なんで好きになるようなことするかな!!


わたしに、そんな資格ないのに。


そうだ、落ち着けわたし。



……ってもう戻ってきたし!


「はい」

「早っ! あ、ありがとー」

「んーどういたしましてー俺も飲も」


おっきいコーラの缶を片手に元の椅子にドカッと座って、プルトップをひっかけて開ける。


とか、一部始終観察するなってばわたし!

ドキドキするな心臓!


慌ててウーロン茶を流し込んでクールダウンする。


はぁ……意識しないように、って難しいな……。


でも、わたしがひとり悶絶してるのに神林くんは全然気付かず、もっとすごいことをやってのけた。


「コーラ甘っ! 炭酸の気分だったからちょーし乗って買ったけどやっぱ甘いわー。笠原、お茶ちょーだい」


そう言って、今わたしが飲んだばかりのウーロン茶を奪って、一口、飲んだんだ。