パレット


「最近は? 部活行ってる?」

「あんまり……垂れ幕描いてたから」

「あっアレ完成した!?」

「うん、一応……」

「えー楽しみだな! 夏休み終わったら見れるな〜」


わたしなんでこんなとこいるんだろう?

しかも神林くんと、2人で……。


「あ、そうだ! あん時はちみつレモンありがと! 好評だったよ〜自慢したかったのに。笠原が作ってくれたって」


自慢なんかになんないよ、そんな……。


「タッパー今度返すな」


なんで神林くんはわたしと喋ってくれるんだろ?

なんで笑ってくれるんだろ?


全然知らない人に、バカにされる女だよ?

神林くんの隣に立つ資格なんかないんだよ……?


「笠原? どした?」

なんて優しいんだろ。

「神林くん、は……」

「ん?」

「神林くんは、いいの? わたしなんかと……」



わたしなんかといて、楽しい?



言い切らない間に、一発目の花火が打ち上がった。



ドーーン……

パラパラパラパラ……



空に光が散る。

夏の華。


何発も連続で打ち上がって。


もう何も話さず、ただ、それを、見上げてた。


首が痛くなっても、見上げ続けた。