?
青年は入れないと言った。
人影を見ると、暗くてはっきりとは分からないが此方を正面にして鳥居の寄りかかっていることが分かる。
…入れるんじゃないですか。
文句の一つでも言ってやろうと走る。
しかし、ある程度の距離になると、足をぴたりと止めた。
なんで、なんで、なんで…
黒く長い髪に赤紫の着物。
いや、着物は血で染まり真っ赤であった。
唇が綺麗な弧を描く。
脳内で警鐘がなる。
―――逃げろ
女の人はゆっくりと禍々しい気を放ちながら此方に近づいてくる。
片手に握っているのは血が滴る刀。
殺される。
私はがくがくと震える足を必死に使って、鳥居とは反対の元来た道を走る。
途中何度も何度も躓いたが、其の度に早く立ち上がってまた走る。
後ろから女の人が近づいてくる気配がする。
怖くて仕方がない。
出入りしていたのはこの鳥居ではない筈だ。
どうしてここに彼女が現れたのだろうか。
それに、青年の行方が分からない。
走って、走って、走った。
そして、私が戻ろうと決めた場所まで来た。
この先もずっと同じだろうと思っていた。
「―――っ?」
しかし、よく目を凝らすと先程まではなかった青い鳥居が見えた。
いつの間に…。
考えるよりも早く行動に出る。
最後の体力を振り絞り、青い鳥居まで精一杯走る。
青い鳥居を跨ぐ直前、初めて女の人の声を聞いた。
『やめて。』
そういった気がして振り返った瞬間、
――――ふわり
浮上するような感覚に陥り、意識が途絶えた。
【chapter.3 end】
