「…ごめんなさい。」

答えることが出来ずに、ただ下を向いて謝る。



その言葉を聞き、葵君は困ったように笑った。



「そんな謝らないでよ。

理由、当てていい?」


「え…」

葵君の言葉に反応がとれない。


あたしにも、理由はわからないから。



「それくらいいいよね。
うん。」


葵君はひとりで納得してから、あたしの言葉を待たずにこう言った。

「さっき出て行った人が好き、なんでしょ?」


「え?」

思わず顔をあげる。



「だから、結衣ちゃんの幼馴染み。

名前までは出したくないけど。」




今日だけでもう3回も聞くその言葉。


未だにあたしにはよくわからない…けど。



誰かにぶつけることもできない、
どうしようもなくもどかしい、


この気持ちを恋と呼ぶなら、

あたしは颯太が好きなのかもしれない。





とりあえず、行かなきゃ!



「あ…あたし、
行くところあるから先帰るね。

本当、御免なさい。」


もう一度勢いよく頭を下げ、
今度は葵君の顔を見ずに
背を向けて走り出した。