「香さ、中学の時俺のこと無視してただろ。」

薫の不機嫌な声が聞こえて、パッと目を開ける。

「え、バレてた?」

アハハハ…

「小学校の時は俺を見かけただけで、喧嘩売ってきたくせに。」

「も、もう、忘れてよっ!」

思い出すのも恥ずかしいっ!

「そのくせにいつも俺のこと睨んでた。」

薫の顔を見ることは出来ないけど、多分怒ってない。

「…睨んではないよ。ただ、薫が気になって仕方なかったんだもん。」

答えながら、だんだん声が小さくなってしまう。

あの時は、どんどん大人っぽくなっていく薫を見て、こどもじみた態度しかとれない自分に苛立ってたんだ。

「私みたいな変な女が付きまとってたら、薫は嫌なんだろうなって思ったから…。」

だから、薫に近付かないようにしてたんだ。

「へぇ、変な女って自覚あったんだ。」

そういって薫は愉快そうに笑った。

ムカつくところは全然変わってない…!