「あれだけ罵声浴びせられて好きなんて、俺マゾかな?」

「ば、罵声じゃないよ…。」

「何万回馬鹿って言われたか。」

本当、何回言ったんだろう…。

「…ごめん。」

「…ったくどんだけ好きなんだって話だよな。」

さっきから何度キュンキュンさせれば気が済むのよ…。

今までの無愛想な態度から急にこんなこと言うなんて、私の心臓をどうしたいんだろう…。

はぁ…

薫は溜息を漏らした。

「でも良かった…。ちゃんと香を好きだって伝えられて。」

絞り出したような薫の声に、私はまた泣きそうになった。

ズズ

「俺の制服に鼻水つけるなよ。」

「…っ、つけない!鼻水って私一応女の子だよっ!」

「はいはい。」

小さい子どもを宥めるように、薫は私の背中をトントンと叩いた。