『香』って呼ばれて動揺して、第10フレームの第1投目は2本しか倒せなかった。

それに、すでに最終スコアが『216』と表示されていた薫のスコアを見て、どんなことを言われるのかドキドキしていた。

「あと3点なんだから、頑張れよ。」

ゲームの終わりになってようやく薫の口から応援の声が聞こえた。

ますますドキドキしちゃうじゃない!

「何でも言う事聞いてやるから。」

そう、だよね!

ここで3本以上倒せば、なんでも叶えてくれるんだ。

なら、絶対倒すもん!

背中に薫の視線を感じながら、まっすぐ足を踏み出した。

手を振り子のように振って、まっすぐボールを投げた。

思わず手を合せて、心の中で祈る。

どうかそのまま、まっすぐに。


ボールはすこしだけ右に曲がったけど、ちゃんとピンを捉えて、ガラガラと6本倒して行った。

「や、やったー!」

私の最終スコアには『123』の数字が点滅していた。