第9フレームは5本で、残り5点。

もし120点越えたら、アイツにどんなお願いしようかな。

また一緒にボウリングしたいって言ったら、叶えてくれるのかな?

「ほら、次アンタの番。」

アイツがぼーっとどこか上の空だったから、肩をトントンと叩いた。

なに考えてたんだろう?

気になる気持ちをぐっと抑える。

「え、あぁ。」

我に返ったようにアイツは立ち上がり、ボールを取りに行く。

「…あのさ、お前いい加減アンタって呼ぶの止めろよ、女なんだから。」

急に振り返ってそう言った。

なによ、急に。

しかも女だからとか意味分かんない。

「さっきみたいに『薫』って呼べば良いだろ?」

「そっちだって、お前って呼ぶくせに…。」

自分ばっかりなによ…。

「お前が良いなら、『香』って呼ぶけど。」

なんで私が『香』って呼ばれたくないみたいな話になってるの。

「…分かった。『薫』って呼ぶから。」

急な展開に驚いたけど、本当は『薫』って呼びたかったんだよ。

知らないかもしれないけど…。