お店を出る時に、木下さんとすれ違った。

心の中でごめんなさいって謝った。

折角の機会だったのに…。


勢いよく飛び出したものの、お店を出た途端どうでも良くなって、とぼとぼ歩きだした。

駅からすこし遠くて、商業地域の端っこにあるから人通りも少なくて、急に寂しくなった。

自分で出てきたくせに、ね。

「香っ!」

急に、名前を呼ばれて私は周りをキョロキョロする。

誰?

「お前、なんで急に帰ってんだよ。」

グイッと腕を引っ張られて、背中が何かにぶつかった。

…えっと

なんで、アンタがいるの?

っていうか、『香』って呼んだよね?

「帰るなって言っただろ。」

「知らないわよ。」

なによ、急に。

「お前んち、そんな門限早くないだろ?」

そんなのアンタに関係ないじゃん。