姿見を教室まで運んだ私は、また手持ちぶさたになった。

「玲奈、なんか手伝うことある?」

日程表と睨めっこしている玲奈にそっと声をかける。

私は着付けも、ヘアメイクも出来ないから正直役立たずなんだ。

「あ、香。ちょうど良かった!男子の部屋行ってきて!」

「えっ?男子の部屋?」

男子の待ち部屋に入れと?

「安達がさ、女の子の目で確認して欲しいって電話してきたんだよね。だからお願いっ!」

顔の前で両手を合せ懇願されてしまっては仕方ない。

これも、忙しくしている玲奈のためだよね。

「分かった。行ってくる。」

「ありがと!小山くんを最高の良い男にしてきてね!」

玲奈の念押しの一言に、胸がドキンといった。

"最高の良い男"

今だけは、天の邪鬼封印出来ますように…。