美代ちゃんがメイク直しをしている間、私は美代ちゃんの代わりにアイツの隣に行った。

「肩に置く手を、もっとこう愛に溢れる感じに!」

玲奈が大声で叫ぶ。

玲奈は"愛"の瞬間に手をぶわっと広げる。

愛って、分かるのかな?

つい心配になって、アイツを見る。

「なんだよ。」

どうして、いつも不機嫌なの?

「愛って分かってる?」

私がそう聞くと、一気に馬鹿にしたような顔をした。

あぁ、失敗!

「分かるよ、愛くらい。」

なんか、胸がズキンとした。

誰か特定の人のこと思い浮かべたりしているのかな。

「お、良いね!小山くん。」

玲奈は両腕で大きく丸を作った。

なんだろう、イラッとする。

愛なんて、分からなくて良いよ…。