愛美はよくこうして、母に話しかける。
母と話をしていると、母の笑顔が見える気がして…。
この母の笑顔に、愛美は勇気づけられる。
母の分まで、生きて行かなければと思う。
愛美の母親は亡くなったのは、
愛美が中学三年になってすぐの事。
まだ、桜は咲いていない春だった…。
母は女で一つで愛美を育ててくれた。
そのために、無理をし続けて来たのが原因だった…。
愛美が中学に入ってから、母は入退院を繰り返していた。
母は最期の時を自分で分かっていた。
だが、ずっと自分の胸の中にしまい込んで、
愛美には言わず、いつも笑顔だった…。
辛かったはずなのに、苦しかったはずなのに、
愛美の前ではそんな素振りは全く見せなかった…。