「相当嫌われているのね、この森に」

お茶をしながら彼女は言った。

「どういうことさ」

「ひどく迷ってしまったのは森のいたずら。まだ出口に出してくれる方がマシなのよ」

「なんで嫌われた?」

「森に訊いて」

「僕は魔女じゃないからわからないよ」

彼女は二回瞬きをして、不思議なものを見るかのような目を僕に向けた。

「あなた、魔女は何ができるか知っているの?」

「魔法を使うんだろ? 何でもできるって聞いてる」

ところが今度は呆れられた。

「てっきり少しは知っているのかと思ったけど」

僕はよくわからないので魔女について教えてもらった。

「魔女にできることは、ただ自然と語らい、力を借りることだけ。

人間は自然を使い、文明を遂げてきた。そういう面では魔女も同じなの。けれど、その扱い方は違う」

「扱い方?」

「例えば、人は重力に逆らえないわね。跳んでも落ちてしまう。けれど、気体の特徴を生かして飛ぶことができるようになった。
対して魔女は、空気の流れを違うように使い、飛ぶ。詳しいことは秘密だけど、言えるのは、魔女もその仲間になる、ということね。」

「じゃぁ、人間とやっている意味は変わらないってこと?」

「ええ。それに、ここだってあなたたち人間のように、外敵刺激から守るべく“膜”を張って森を守っているのよ」

「だけど“膜”なんてあるように見えなかったけど?」

「それが人間と魔女の違いよ。
人間が魔女の術を使えないのと同じで、私も人間の創造物を扱うのは難しいわ。そのことを忘れないでね」

それはつまり、僕たちのことは僕たちで解決しろ、ということなのだろう。

俺の表情を見るなり、彼女はうすく微笑んだ。

「その通りよ」