俺は戸惑いつつも、言われたとおり森に入り、そこから様子を見る。

俺という奴は情けない。

彼女は集中の真っ只中にいた。

彼女のワンピースがふわりとなびいた。

風が彼女を包む。

その次に、彼女の足は地を離れた。

その時にはもう、タカが彼女の方へと一直線に向かって速度を上げていた。

「リラ!!」

すると彼女は手の内で小さな嵐をつくる。

それは大きくなるにつれて穏やかになり、タカたちを包み込んでいた。

「おこらないで‥」

リラはタカたちを宥(ナダ)め、そして空へと帰した。

タカが見えなくなっても彼女は今だに空にいた。

右手を真っすぐ前に伸ばしたら、右腕に水が取り巻く。

その水は、より高く、空に放たれた。