突然、辺りからうなり声がきこえた。

「あぁ、忘れてた。万が一のボディーガードって“狼”たちなのよね」

ジスは冷や汗を流し、ゆっくりと彼女から離れた。

「おいで」

彼女は一匹の狼を招き寄せた。

気持ち良さそうに撫でられ、次にそれは仲間を呼ぶ。

「早く帰ったらどう?」

「―――き、君が無事でよかったよ。行きましょ局長!」

「お、おう。――あ、ハニー、名前を教えて」

だれがハニーよ。という表情でジスを一瞥し、彼女は狼たちに言った。

「人間でも私を心配して来てくれたの。やってもいいけどもう少し待って」

彼女はゆっくり立ち上がり、倒れそうになるがジスがとっさに支える。

「呪われてもいいの?」

呼吸が落ち着きはじめていた。

「君に呪われるなんてうれしい限りだ」

「なら、お望みどおり、呪ってあげる」

彼女は自分の力で立つと、ジスの頬に手を添える。

そしてじっと瞳を向けた。

「今日は早くに寝ることね」